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半導体業界のM&A動向について


2023年11月6日 M&A

1.半導体業界における現状

半導体の画像

 

近年、デジタル化が進み、IT企業だけでなく、製造業、サービス業、農業、医療等、全ての産業、社会経済に変革をもたらしています。
また、地方創生、少子高齢化など日本が抱える課題についても、デジタル化無しに解決することはできないと言われており、
持続的な成長を遂げるためには避けて通ることができない大きなテーマとなっています。
そのデジタル化を支える大黒柱の一つが、半導体と言われております。

半導体は、2000年代以前は各種電気製品に使用される部品でしたが、デジタル化が進むにつれ、
様々な製品に使用される「基幹部品」となり、重要性は増しています。
そのようなことから経済産業省は、半導体を国民生活、国民経済活動を支えるための不可欠な物資、「戦略物資」として位置付けています。

また、半導体は経済的側面からだけでなく、安全保障と密接にかかわるものとしても捉えられています。
米中技術覇権対立の中で、米国では、半導体製造技術・製品等も含む輸出管理制度の強化が実施されています。
現在、世界の半導体受託製造分野の65%以上を台湾が占めており、台湾有事も想定される中、自国内に生産拠点を持たない国は、
不測の事態が起きた際に半導体を手に入れることが難しくなる可能があるため、世界各国で半導体産業に対する取り組みを強化しています。

日本においては、半導体の安定供給の維持のために先端半導体製造を目指すラピダスの新設や台湾のTSMCの誘致などに力を入れています。

 

世界各国の半導体に対する取り組み

(出所:経済産業省「半導体戦略(概略)」より)

 

2.半導体業界の市場規模

 

2022年の世界半導体市場は前年比3%増の約5,740億ドルとなっています。
在宅特需の一巡に加え、世界的なインフレ、ロシアによるウクライナ侵攻等の地政学的リスクの高まりなどが個人消費や企業の設備投資等に影響し、需要が失速したと言われています。
また、同年における日本の半導体市場は、約6兆3,264億円となっています。
日本における半導体市場の世界シェアは、約10%となっており、1990年頃は世界の半導体市場(約5兆円)の約50%を占めていましたが、日米貿易摩擦や国内におけるデジタル産業への投資の遅れ等により国際的なシェアが低下しています。

 

世界の半導体市場【単位:十億ドル】

(出所:JEITA「2022年秋季半導体市場予測について」より)

 

3.半導体業界における課題

 

課題① サプライチェーン構築
2020年の秋以降、世界的な半導体不足となっていますが、これは、複数の要因が複雑に絡みあっていると言われています。
一つ目の要因として、米中貿易摩擦が挙げられます。
米国は中国企業への制裁を行うため規制を強化しており、
対象企業の中に中国大手ファウンドリーのSMICが含まれていたことが影響しております。
代替先として台湾の企業に発注したものの、受注に対応しきれなくなっており、半導体不足に繋がった大きな要因と言われています。

二つ目は、新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられます。
テレワークの増加、巣ごもり需要、自動車需要の増加によって、PMIC等の半導体不足に繋がったと考えられています。
PMIC等の半導体が製造されているのは、最先端の半導体を製造する工場ではなく、一世代前の半導体を製造する工場であり、
老朽化が進んでいるケースが多いことから、ファウンドリーへの委託に切り替えているケースが目立っています。
しかし、ファウンドリーの多くは生産能力を拡張していないことから、急増した注文に対応することが難しかったと言われています。

上記以外の要因として、中国の生産拠点で集団感染が起こったことをはじめ、
世界の多くの工場が閉鎖されるなど生産停止を余儀なくされたことによるサプライチェーンの混乱や新規需要の発生等が挙げられます。
IntelのCEO Pat Gelsinger氏によると、半導体業界の供給不足は2024年まで続くと回答しており、半導体不足は続くと考えられます。

課題② DXの推進
ドイツの “インダストリー 4.0”、中国の “中国製造 2025” など、世界の主要各国が、
第四次産業革命への対応を進めている中、日本もまた、目指すべき社会の姿として “Society 5.0” を掲げています。
DX化することにより製造現場のデータを収集し、”見える化”をすることによってもたらされる効果は非常に多く、
親和性が非常に高い業態であると言えます。

そもそも製造工程には、研究開発-製品設計-工程設計―生産などの連鎖である「エンジニアリングチェーン」と、
受発注-生産管理-生産-流通・販売-アフターサービスなどの連鎖である「サプライチェーン」があり、
IoT を始めとする最新のデジタル技術は、双方のチェーンの各所において、データの利活用を進める優れたソリューションを提供し、製造業に画期的な革新をもたらすと言われています。

製造業におけるDXの取り組み状況については、「全体」でも半数以上がDX取り組んでいないと回答しております。
特に300名以下の規模の企業では、70%以上がDXの導入が出来ていないのが現状となっています。

 

DX取り組み状況【単位:%】(出所:IT人材白書2020より)

 

DXの導入・推進が出来ていない背景として、適正な”人材”を獲得することが難しいことが挙げられます。
DX白書2023」の中で ユーザー企業に対して行われたアンケートによれば、
DXを推進する人材の「量」・「質」ともに不足感が強まっている状況が確認出来ます。
各企業においてDXの人材不足となっており、製造業としてそれらの人材を採用するためには、相応のハードルがあるかと思います。
デジタル技術を理解しているDX人材の「量」・「質」両面での供給不足は、DX化推進に向けた課題の一つと考えられています。

 

DXを推進する人材の「量」の確保(出所:独立行政法人情報推進機構「DX白書2023」より)

 

4.半導体業界における展望

 

半導体業界は、5G・DX等のデジタル社会を支える重要基盤であり、
経済安全保障等の観点から日本を含めた世界の主要国が積極的に投資をしていくことが見込まれています。
しかし、日米貿易摩擦や国際情勢が複雑化しており、国家間の関係性からサプライチェーンが崩壊するリスクがあります。
現状各国に依存しているサプライチェーンを自国で対応可能にする必要があり、日本においては、
国内の半導体生産体制の強化を図るため、経済産業省の主導により、台湾のTSMCの工場を誘致するプロジェクトを加速させています。

また、ライフサイクルが非常に早いため、研究開発や設備投資を継続的に行っていく必要があります。
業界としてこのような特徴があることから、大手企業においては、自社のポジションと業界の先行きに合わせて、買収やノンコア事業の売却を検討しています。
前者は、主に自社にない技術、サービス、人材、販路、生産設備等の獲得、
後者は、不採算事業やコア事業へのリソース等の集中のために行われることがあります。

特に近年、サプライチェーンの問題が浮き彫りになっていることから、M&Aによりサプライチェーン強化を検討している企業も少なくありません。
中小企業においては、それらに対応する人材や資金が不足している可能性があるため、
自社単体での成長戦略はいずれ限界がやってくるものと理解をしています。
そのため、同業・異業種含めたM&Aは、今後も活発に行われることが考えられます。

 

5.半導体業界のM&A動向

 

2013年1月以降、半導体業界でのM&Aは公表ベースで54件(注)となっています。

 

(注)国内における買収、事業譲渡、子会社の買収事例のみ抽出。
(出所:日経バリューサーチより)

 

【事例①】サプライチェーンの強化

 

【事例②】新たな技術の獲得・成長分野への投資

 

このように、異業種/周辺業種との間においても、「既存事業の強化」、「効率化・相互補完」といった観点でのM&Aが行われています。

 

6.最後に

 

昨今の新型コロナウイルスの流行等の影響を受け、将来の見通しに不確定要素が加わったことから、スピード感を持った経営の舵取りや事業の見直しが必要と考えられています。
こうした状況に対応する前向きな解決策のひとつとして、M&Aを検討されてみてはいかがでしょうか?

 

【参考文献】

経済産業省 「半導体・デジタル戦略」
菊地正典(2023年)、「半導体産業のすべて 世界の先端企業から日本メーカーの展望まで」、ダイヤモンド社

 

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LBP大川

大川恭史

大学卒業後、大手製薬会社に入社。
約4年間、MRとして開業医、病院、調剤薬局等にて医療用医薬品の情報提供活動に従事し、2019年にM&Aアドバイザリー会社に入社。
主にセルサイドのソーシング、エグゼキューション業務に従事し、2021年1月にLBP入社。
LBP入社後は、主に電子部品関連(半導体、産業用機械含む)及び生活関連用品業界の案件開拓及び実行に携わっている。

法政大学社会学部社会学科卒

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